脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症とは?

脂質異常症とは、血液中に含まれるコレステロールや中性脂肪の値が異常をきたして血液がドロドロになる病気です。
具体的には、

  • 悪玉コレステロール(LDL)の上昇
  • 善玉コレステロール(HDL)の低下
  • 中性脂肪(TG(トリグリセリド))の上昇

等の数値異常があった時に診断されます。以前は脂質が高ければ問題となっていたので高脂血症ともいわれていました。しかし近年善玉コレステロールといって良いコレステロールがあることも分かり、総コレステロールが高い人全てが問題ではないことが分かっております。この悪玉コレステロールと善玉コレステロールの違いですが、体内でコレステロールを運び、ばら撒いている働きをしているものを「悪玉コレステロール」、反対に体から余分なコレステロールを回収しているのを「善玉コレステロール」と呼んでおります。つまり悪玉コレステロールが多いということはコレステロールが溜まりやすくなります。逆に善玉コレステロールが少ないと回収されきれずこちらもコレステロールが高くなるため、この悪玉コレステロールが高いか、善玉コレステロールが低いかが問題なるため高脂血症から脂質異常症ということが多くなりました。

中性脂肪は別名トリグリセリドといいます、英語でtriglycerideと表記されることから略称でTGと表記します。中性脂肪は体が活動する際のエネルギー源となります。一方で、過剰に中性脂肪が血中に存在すると、体内に蓄積されていきます。血液にあふれた中性脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪として肥満の原因にもつながります。

このように脂質異常症は悪玉コレステロール、善玉コレステロール、中性脂肪の三つが登場します。それぞれの基準ですが、

※スクロールで全体を表示します。

LDLコレステロール 140㎎/dL 以上 高LDL コレステロール血症
120~139㎎/dL 以上 境界域高LDL コレステロール血症
HDLコレステロール 40㎎/dL 未満 低HDL コレステロール血症
トリグリセライド 150㎎/dL 以上 高トリグリセライド血症
non-HDLコレステロール 170㎎/dL 以上 高non-HDL コレステロール血症
150~169㎎/dL 以上 境界域高non-HDL コレステロール血症

となっております。注意が必要なのは空腹時の採血結果ということです。脂質は、食事によって数値が乱高下します。特にトリグリセリドが食事に影響を受けやすく、食後1,2時間で上昇し、4,5時間でピークに達すると言われています。一方でLDLの値を測定する分にも中性脂肪が重要になります。LDLは、
TC(総コレステロール)-HDL(善玉コレステロール)-TG(中性脂肪)/5=LDL(悪玉コレステロール)
と計算するため、中性脂肪の数値が実際より高いとLDLが低く出てきてしまう可能性があります。そのため、この表は空腹時(食後12時間空けた)際の数値とご理解ください。健康診断などで空腹時に採血するように言われたのはこの脂質異常症の数字を正確に測定するためでもあります。近年悪玉コレステロールは低ければ低い方が良いというデータが出てきたことからLDLは120-139は境界型となっております。Non-HDLは中性脂肪が高かった時に算出される数値です。善玉コレステロール以外の総数が重要になります。

脂質異常症の症状は?

脂質異常症自体で症状が出ることはほぼありません。また脂質異常症の方は非常に人数が多い病気です。厚生労働省の発表では平成29年度では、脂質異常症が220万、糖尿病340万と一見すると糖尿病の方の方が多くいるように見えます。しかしこれは、治療している方の人数です。実は脂質異常症は放置している方がはるかに多いとされています。特にLDLは悪玉とつくので皆さん治療を積極的にされている印象ですが、中性脂肪は軽視される傾向が強いです。

  • ちょっと最近飲み過ぎたなぁ
  • 仕事が忙しくて運動してないから仕方ない
  • 他の人も脂質異常症引っかかったといってたし大丈夫
なんて甘くみてる人も中にはいるのではないでしょうか?

先ほど言ったように脂質異常症自体は症状はありません。何が最大の問題かというと、『動脈硬化』が進行することです。血液中にコレステロールや中性脂肪が多い状態が続くと、血管の壁に沈着し、プラークと呼ばれる塊が作られます。このプラークが血管壁に沈着と、剥がれることを繰り返すことで、時間の経過とともに血管の壁がダメージを受け続けます。ダメージを受け続けることで、血管が固くなり、また血管壁が厚くなることで血管が狭くなります。この血管の状態を動脈硬化と言います。血液がドロドロで流れづらいうえに血管が狭くなり、さらにプラークなどが破れて流れて臓器へ行ってしまうとさらに詰まりやすくなります。こうして動脈硬化を中心に血管が詰まりやすくなることで臓器に栄養や酸素が行き届かなくなり、様々な病気を引き起こす可能性があります。

中でも怖いのが、

  1.  心筋梗塞、(心臓)
  2.  脳梗塞、脳出血(脳)

の二つになります。心臓や脳は一度ダメージを受けてしまうと細胞は二度と元には戻りません。また血管も同様に一回固くなった動脈硬化を元に戻すことは難しいです。そのためこれらの病気が起きたらそろそろ脂質異常症に向き合うかとなっても時すでに遅しの可能性があります。

特に心筋梗塞・脳出血・脳梗塞は突然起き、突然死するリスクもある病気です。元気な人が突然亡くなるときは大体上記3つの疾患の可能性が高いです。さらにこれらの病気は突然死しなくても恐ろしい後遺症を引き起こします。それぞれの病気の恐ろしさについて簡単に記載していきます

(1)心筋梗塞

心臓まで栄養を運ぶ血管が止まることで心筋梗塞を引き起こし顔面蒼白などの強い症状が現れる場合もあります。心筋梗塞は、息が苦しくなったり嘔気などの合併症を引き起こすこともあります。心筋梗塞は30%の方が命を落とすといわれるほど、とても怖い病気です。日本人の死亡原因は一位の癌に次いで第二位が心筋梗塞です。
心筋梗塞は、初期のころは心電図や採血などの検査で異常を呈さないことがあるので注意が必要です。心臓の動きが悪いかどうかを心臓エコーで確認しますが、心臓エコーは循環器以外で対応できない場合もあり、さらに誤診が多いとされています。

心筋梗塞の治療は、主に2通りです。

  1. 緊急カテーテル(血管内にカテーテルを通しステントを入れてつまった部位を広げます)
  2. バイパス手術(血管が詰まってる部位が多い場合は手術で、他の血管をつなげて別の血管の通り道を作ります)

心筋梗塞の治療では、血管が詰まって壊死した心臓細胞を復活させることはできません。これにより、心臓の動きが不整になる狭心症や心臓の動きが悪くなる心不全などの合併症を引き起こすリスクが高まります。また、患者様を一番悩ますのが幻肢痛という胸痛の症状です。

  • あの胸の激しい痛みがまた現れたらどうしよう?
  • 心筋梗塞が再発するか心配・・・

などの不安から、強い痛み症状が続きます。心筋梗塞を一度発症すると、様々な合併症などのリスクから都度病院へ通って細かい検査を受けて以上がないかを調べる必要があります。何度も症状が続くと、身内からは『オオカミ少年』のような扱いを受けたり、軽視されるようになって、気持ちが落ち込むこともあります。

(2) 脳出血

血管に強い圧が加割り続けると、脳血管が破れて脳出血を引き起こします。代表的な症状は、激しい頭痛です。

  • オノで切られたような今まで感じたことのない激しい痛み
  • 突然現れる頭痛の症状

上記、2点の症状が脳出血の疑う所見となっています。
また出血部位によって、

  • 嘔気
  • 激しいめまい
  • 片足、手のしびれや麻痺

といった合併を引き起こすこともあります。
脳出血の有無を調べるには、頭部CTによる検査をおこないます。CT検査は、総合病院のような大きな病院でないと難しい検査となります。さらに、初期の少量の出血の場合、CTでは判断が難しく見逃されてしまうケースもあります。脳出血の治療は、高血圧症によって引き起こされている場合は降圧薬で血圧を下げながら血管にかかる圧を抑制する必要があります。出血量が多い場合は、緊急手術で出血している部位を止血する必要があります。あまりに出血がひどい場合は、手術も難しくそのまま亡くなられてしまう場合もあります。

(3) 脳梗塞

脳の血管が詰まって脳梗塞を引き起こします。
脳梗塞は3つのタイプに分かれます。

  1. 脳の比較的太い血管が詰まることで起こる「アテローム血栓性脳梗塞」
  2. 脳の細い血管が詰まることで起こる「ラクナ梗塞」
  3. 心臓でできた血栓が脳の血管で詰まることで起こる「心原性脳塞栓」

どのタイプも動脈硬化が原因で起こります。
脳梗塞の症状は

  • 左右どちらかの体が動きづらい
  • 舌が回らず喋れない
  • 物が2重に見える
  • 激しいめまいがする

上記の症状が突然起こることが多いです。
頭部MRIで脳梗塞の診断ができます。頭部MRIは、CTよりさらに特殊な機械なので読影できる医師や検査できる技師が限られます。そのため、発見までの初動が遅れることも多いです。治療は、t-PA治療という血栓を溶かす治療や、カテーテル治療で血栓を回収する治療がおこなわれます。どちらの治療法も、時間との勝負で数時間以内におこなわないと脳が壊死してしまう恐れがあります。頭部MRIによる検査と同様に、治療も特殊な方法を用いるため、総合病院の中でも神経内科や脳外科がいないと治療ができない場合が多いです。

(4) 脳卒中の後遺症

脳出血と脳梗塞を合わせて『脳卒中』といいます。
脳卒中は、ほとんどが無症状です。さらに退院できる人の方が少ないのが特徴です。具体的な合併症は以下の通りです。

  • 運動麻痺(右か左の手足が動かない、もしくは力が入りづらい)
  • 感覚麻痺(手足のしびれが残って日常生活に支障が出る)
  • 構音障害(口が回らなく会話ができない)
  • 嚥下障害(食べ物や飲み物が上手く呑み込めず、誤嚥を繰り返す。場合によっては肺炎を繰り返すことになる)
  • 記憶障害(昔の思い出が無くなったり、短期の記憶が無くなったりする)

脳卒中は、多くの障害が残ります。症状の重症度によっては、日常生活が送れずに介護が必要となる場合も多いです。リハビリテーションを続けても完治するのが難しく、不自由な状態で生活することになります。できることが限られたり、周囲とのコミュニケーションや意思の疎通が難しいことも多いです。さらに、お世話をする家族にも非常に負担がかかります。症状が重い場合は、一生施設で暮らす方もいます。

高血圧症は、動脈硬化が進行していくと怖い病気が突然やってきます。自覚症状が特にないからといって高血圧症を軽視せずに、適切な治療を行いましょう。

脂質異常症の治療すべき数値について

脂質異常症を放っておくわけにはいかない病気と分かったところで次に気になるところが、どの位の数値であれば薬物治療をすべきかだと思います。2018年の脂質異常症ガイドラインでは下記のような目標設定が記載されています。

リスク区分別脂質管理目標値

※スクロールで全体を表示します。

治療方針の原則 管理区分 脂質管理目標値(mg/dL)
LDL-C non-HDL-C TG HDL-C
一次予防
まず生活習慣の改善を行った後、薬物療法の適用を考慮する
低リスク <160 <190 <150 >40
中リスク <140 <170
高リスク <120 <150
二次予防
生活習慣の是正とともに薬物療法を考慮する
冠動脈疾患の既往 <100
(<70)
<130
(<100)

この中で最も注意が必要なのが悪玉コレステロールです。近年でリスクがある方は悪玉コレステロールは低ければ低いほど良いという考え方が主流になっております。そのため他の脂質異常症の中でもまず悪玉コレステロールに関しては注意が必要です。高リスクもしくは心筋梗塞や狭心症の方は正常値以下まで下げるように最近の記載では示されています。なおこのリスクの分類ですが、

冠動脈疾患危険因子のカウントによる簡易版のリスク評価(40~74歳に適用)

下記の5つの危険因子をカウントする

  • 喫煙
  • 高血圧
  • 低HDLコレステロール血症
  • 耐糖能異常
  • 早発性冠動脈疾患家族歴

(第1度近親者かつ発症時の年齢が男性55歳未満、女性65歳未満)
注:家族歴など不明の場合は0個としてカウントする。

性別 年齢 危険因子の個数 分類
男性 40~59歳 0個 低リスク
1個 中リスク
2個以上 高リスク
60~74歳 0個 低リスク
1個 高リスク
2個以上 高リスク
女性 40~59歳 0個 低リスク
1個 低リスク
2個以上 中リスク
60~74歳 0個 中リスク
1個 中リスク
2個以上 高リスク

日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版:36,2018

と性別や年齢によっても細かく分けられております。また動脈硬化を引き起こす他のファクターが在るかどうかが重要になります。喫煙や高血圧、糖尿病といった病気を合併の方は悪玉コレステロールを治療しなければいけない数値が厳しくなります。また善玉コレステロールは現状治療するといったよりは低値の場合、高LDLを治療するかどうかの指標にとどまります。そのため低HDLのみ異常値の場合はそこまで緊急性は高くありません。
中性脂肪は現在ではリスクあるなしに関わらず、150以上であれば治療を考慮する必要があります。Non-HDLは善玉コレステロール以外全てのコレステロールです。この数値は中性脂肪が400以上の時に参考にする値なので、医師側が気を付ける問題なのでここでは省略いたします。

さらに表に示されていないですが、最近非常に注目されているのが食後の脂質の値です。特に食後に上昇しやすいのが中性脂肪になります。食べる量や物によってばらつきがあるため以前は食後の中性脂肪はあまり参考にならないとされてきました。しかし冷静に考えてみると食後の中性脂肪というのは非常に重要です。多くの方が三食の食事をとっているかと思います。さらに三時のおやつや夜食などを含めるともっと回数が多いかもしれません。つまり、空腹状態よりも現代人は食後状態の方がはるかに長い時間要することになります。そのため空腹時中性脂肪が低くても、日常生活を送っているうえで食後中性脂肪が隠れている人が中にはいます。
食後高脂血症の具体的な病態ですが、中性脂肪の分解がスムーズに進まず、レムナントという分解途中の中性脂肪の塊が血液中に長くいることで数値が上がると言われます。このレムナントも血管に沈着することで動脈硬化の原因になると言われています。実際に食後TG84mg/dLの人に比べて、TG166mg/dLと食後高脂血症の方は
冠動脈疾患で2.86倍
心筋梗塞で3.14倍
狭心症で2.67倍
突然死で3.37倍
と発症率が上昇すると報告されています。そのため食後中性脂肪が高いのは当たり前という考え方は非常に危険になります。一方で食後中性脂肪は明確な基準が作りづらいです。食事内容や食後の経過時間に左右されるためです。普段の食事で中性脂肪が200を超えるようであれば注意が必要です。300-400以上であれば即治療を考慮したほうが良いでしょう。中性脂肪が高すぎると膵臓を痛めることで急性膵炎になるリスクがあります。アルコールを飲まれるうえに食後中性脂肪が高い方は注意が必要です。

当院の脂質異常症の検査について

脂質異常症は放置されやすい病気です。上記のように症状が現れづらく、動脈硬化による心筋梗塞や脳出血などの疾患が発症した時には時すでに遅しとなることが多いです。医師としてこれらの疾患に苦しんでいる人を多く診てきたからこそ、当院では脂質異常症含めた生活習慣病の治療に力を入れております。まず当院では、

  • 悪玉コレステロール(LDL)
  • 善玉コレステロール(HDL)
  • 中性脂肪

を10分前後で結果が出るようになっております。採血して次回結果説明ですと、患者様の二度手間になるため、そのような負担を減らすに院内で測定できるようになっております。
さらに、脂質の項目は現在の医療では生化学検査に属します。

この生化学という項目は、

  • 肝臓
  • 腎臓
  • 膵臓

等の臓器の炎症をみる数値と同じグループに属しています。7項目以上であれば患者様の金銭面のご負担が増えることはないので、当院では積極的に複数の項目を見る際は脂質異常に関しても精査しております。積極的に検査することで、食後高脂血症の方も見つけることができます。実は食後高脂血症の方は意外と多いです。特に欧米化された食事が根付いている20、30代の方に散見されます。痩せてて普通の女性でも意外と上昇していて、びっくりすることもしばしばあります。このように健康診断で指摘された方以外にも、他疾患で精査した結果見つかった方が当院では大勢います。

脂質異常症が疑われている方は、

  • 他の疾患の合併がないか?
  • 脂質異常症の原因となる疾患がないか?

等が重要になります。

まず脂質異常症が治療対象に当たるかどうかは糖尿病などの合併症があるかどうかが重要になります。また脂質自体の上昇で脂肪肝など臓器障害も起こし得るため、広く精査することが大切になります。健康診断から期間が空いてる方は採血で、脂質異常症が上昇しているか低下しているかとともにぜひ合併症も精査してみましょう。
また脂質異常症の多くの原因が食事と運動不足によるものですが、それだけではありません。脂質異常症の原因としてホルモン異常などが隠れている場合があります。特に多いのが甲状腺の病気です。甲状腺の機能が低下することで、脂質の分解に異常をきたして脂質異常症につながるケースもあります。当院では脂質の数値のみならず、その先にある患者様の身体の状態を見極めるよう従事してまいります。

さらに脂質異常症の継続加療している方も、待ち時間が少しでも減るように工夫しております。先に診察して、採血して、また診察ですと患者様が行ったり来たりと大変ですし、お時間も取らせてしまいます。そのため、当院では採血予定の方は診察前に先に採血することで、採血結果が出ているような状態で診察できるような体制づくりをしております。

ただし受診して一か月後ですので、

  • 健康診断が最近あった
  • 体調がすぐれない
  • 今日は時間がないからまた次回で

等採血希望されない方は、案内する看護師さんに伝えていただければ、診察のみに柔軟に変更させていただきます。

当院の脂質異常症の治療について

脂質異常症の最大の原因は、

  1. 食事量の過料摂取(脂質の増大)
  2. 運動量の不足(脂質の消費不足)

の二つです。そのため食事療法、運動療法が最大の治療になります。そのためこのページにも詳しく後述しようと思います。一方で、受診される多くの方はそのことはご存知かと思います。分かっていても生活習慣をなかなか変えるのは難しいかもしれません。

  1. 毎回仕事後飲みにかなければならない
  2. 食べることが大好きでなかなか辞めれない
  3. 忙しくて運動なんかする暇ないよ

等多くのご事情があると思います。採血結果で『運動と食事頑張って!!』だけで診察が終わって診察代が取られてしまっては、納得いかない方もいるかもしれません。そのため当院ではまず患者様のニーズを大切にしようと思います。内服治療に抵抗ないか、むしろ内服治療がご希望かを大切にして、脂質異常症の実際の数値と合わせて治療方針を決定していきたいと思います。

内服治療ですが、主に

  1. 高LDL血症
  2. 高TG血症

の治療薬に分かります。低HDL血症はこれらの治療を行うことで回復することがあるため重要なのがこの二つです。それぞれの治療薬について簡単に説明します。

① 高LDL血症

LDLを低下させる第一選択肢はスタチン系というお薬を使用します。スタチンは2020年時点では6種類のお薬があります。
(1)クレストール(一般名:ロスバスタチン)
(2)リピトール(一般名:アトルバスタチン)
(3)リバロ(一般名:ピタバスタチン)

の3つはストロングスタチンと呼ばれています。効果が強い分、副作用も強く出る可能性があります。これらよりも効果がやや落ちるお薬をスタンダートスタチンといい、以下の3種類があります。

(1)メバロチン(一般名:プラバスタチン)
(2)ローコール(一般名:フルバスタチン)
(3)リポバス(一般名:シンバスタチン)

高LDL血症がひどい方はストロングスタチン、そこまで重度ではない方はスタンダードからと当院では使い分けていきますまたスタチン系は横紋筋融解症といった副作用が起きえるお薬です。

  • 筋肉痛
  • だるさ

等の症状があった方はご相談いただければ採血で横紋筋融解症が起きたかどうか採血で精査します。またスタチン系は妊娠中禁忌薬になるため挙児希望の方には使用できません。その場合はスタチン以外のお薬で治療します。当院はこのように一つのお薬一辺倒で治療せず、それぞれのお薬の良さを考えて治療していこうと思います。

② 高TG血症の治療薬

TGに対しての治療薬は

  • フィブラート系
  • EPA、DHA

等のお薬があります。効果が強い薬がフィブラート系です。2018年にはパルモディア(一般名:ぺマフィブラート)といった比較的新しいお薬も登場しております。フィブラート系はLDLを下げるスタチン系との併用が禁忌とされていました。フィブラート系の併用によって横紋筋融解症という副作用が増加するとなっていましたが、近年では慎重に投与すれば問題ないことが分かり2018年10月より原則禁忌が削除されました。そのため当院ではLDLとTG両方とも重度に悪い方は積極的に両方治療していきます。

こうしてLDL、TGそれぞれ又は両方のお薬を定期的に処方していきます。脂質異常症は症状じゃなく数値をみないと薬の効果判定ができないため、受診時に採血をお願いすることがあります。一方で空腹時の数値を定期的に測定するのは難しい人も多いかと思います。朝ではなく、仕事帰りやお昼休みなどに受診希望する方もいらっしゃるかと思います。当院では採血する際いつどんな食事したかで柔軟に対応します。大切なのは正確な数値を測ることではなく、脂質異常症をコントロールして動脈硬化から守ることです。特に前述したように近年では食後高脂血症も注目されているため、まず空腹時に来ることよりも定期的に受診することに重きを置いていただければと思います。

一方で脂質異常症の薬物治療が開始された方の多くの人の心配が、『いつまで治療すれば良いか?』かと思います。人によっては一回治療が始まったら、一生やらなくてはならないかと考えられる方もいます。当院では採血していく中で安定していれば、薬を弱いものに変更したり減量したりして、薬なしの生活を目指そうと思っています。しかしそのためにはライフスタイルの見直しが必須になります。そのため次に運動療法、食事療法についてみていきましょう。

脂質異常症の食事療法、運動療法について

(1)食事療法

脂質異常症と言われた方の多くが、『油を控えれば良い』と考えがちですが、それだけでは不十分です。脂質は余ったエネルギーを脂質に置き換えて貯蓄した物質です。そのため脂っぽいものを控えて、炭水化物や糖分が増えてしまっては本末転倒です。一番重要なことがカロリー摂取量です。カロリーとは身体を動かすエネルギーの単位です。

それぞれ体の中で1gあたり、

  • たんぱく質4kcal
  • 脂質9kcal
  • 炭水化物4kcal

のエネルギーになります。これら食事によるカロリー摂取量が適正以内かどうか重要になります。適正なカロリー量は、標準体重と運動量から計算します。現体重で計算すると肥満の方が必要カロリー量が多くなるため注意が必要です。
標準体重は(身長(m)×身長(m)×22)で計算しましょう。この22という数値はBMI22が理想的とされているからです。

次に運動量ですが、

  • 軽い活動(ほとんどデスクワークや家にいたりと運動量が少ない方)
  • 中等度の活動(階段の上り下りや通勤歩行30分以上など適度の運動がある方)
  • 重労働(肉体労働やスポーツを日常的にされている方)

これらの運動量を標準体重とかけ合わせます

軽い活動:標準体重×25
中等度の活動:標準体重×30
重労働:標準体重×35
例えば身長170cmの軽度の活動の方は、

1.7×1.7×22×25=約1600カロリー
となります。身長170cmの人の体重が70Kgだろうと100Kgだろうと、必要カロリーは1600と変わりません。そしてこのカロリー量は非常に制限が厳しいです。例えば
・ご飯一杯(150g) 約250カロリー
・CoCo壱番屋のビーフカレー:821カロリー
・日高屋のW餃子定食唐揚げ:1197カロリー
となります。3食気楽に食べると3000、4000カロリー簡単に行ってしまうので注意が必要です。またカロリー以外にも、

  1. 食物繊維は多めに
  2. 甘いものや炭水化物は控えめに
  3. アルコールは適度な量(例ビール500ml程度)
  4. バランスの良い食生活を心掛けて

等気を付けることがたくさんあります。一回の診察で全てお伝えするのは難しいため、当院では生活習慣病に関するパンフレットをお渡しします。どのような食べ物が危険で、どのような食べ物が良いか一覧表も載っているのでぜひご参照ください。さらに当院の隣の日本調剤薬局さんでは管理栄養士さんが常勤としていらっしゃいます。具体的に自分の食生活のどこを見直せばよいか確認したい方はパンフレットと一緒にぜひご活用いただければと思います。

(2)運動療法

運動には2種類の運動があります。

  1. 有酸素運動(持続的にエネルギーを消費する運動)
  2. 無酸素運動(瞬発的に円るぎーを消費する運動)

の2つです。

  1. 有酸素運動にはジョギング、サイクリング、水泳
  2. 無酸素運動には、ダンベル運動、100m走、腹筋運動

等があげます。このうち重要なのが①有酸素運動になります。脂質はエネルギーの貯蓄なので、体内のエネルギーを持続して消費することで徐々に燃焼されていきます。そのため、②の無酸素運動は筋肉内のエネルギーを爆発させるだけで終わってしまい、全体の消費に結びつかないので注意が必要です。

① の有酸素運動の負荷量ですが、心拍数が1分間に110~130回程度がお勧めとされています。正常な心拍数が50-100回程度のなので軽い負荷になるかと思います。軽い負荷の方が疲労が少ないことで、体の負担も少なく継続しやすいためです。この軽めの負荷を最低30分、週に3回程度することが理想とされています。脈拍数に関しては今はジムなどで測定しながら運動することも可能です。どの位の負荷か気になる方はぜひジムをご活用いただければと思います。

まとめ

  • 当院はLDL、HDL、TGといった脂質異常に関する数値が当日(10分)以内にすぐ結果が出ます。
  • 空腹時の値だけでなく、食後の値も柔軟に参照しながら対応します。
  • 脂質異常症の方は合併症や他に原因がないか必要あれば精査していきます。
  • 当院では患者様のニーズに合わせて治療薬の投与を決定していきます。
  • 当院では薬の副作用が起きていないかも含めて定期的に精査していきます。
  • 当院では生活習慣が改善され、脂質異常症が治ってきたら薬の減量や変更、中止を目指していきます。
  • 食事・運動療法に関してパンフレットをお渡ししお伝えしていきます。
  • 食事に関して個別に指導受けたい方は隣の日本調剤薬局にいる管理栄養士さんと連携し治療方針をお伝えしていきます。

脂質異常症は長く付き合わなければいけない病気です。そのため一日二日食事を減らしたり、運動したぐらいでは意味がありません。
また症状も出ないことから放置されている人も多いのではないでしょうか?
しかし脂質異常を放置した結果、思わぬ大病で人生を台無しにされた方を多く診てきました。
そのため当院では脂質異常症で苦しまないように、積極的な治療を推奨しております。私自身も食事が大好きですし、お酒も嗜むので油断すると健康診断で脂質異常症が黄色信号になることもあります。

そのため24時間フィットネスに通いながら気を付けるようにしております。
ぜひ健康診断などで脂質異常症を指摘された方は放置せずにいつでも当院に来ていただければと思います。
そして当院では脂質異常症の数値ではなく、数値の先にある患者様の身体に目を向けて治療して行ければと思います。

動脈硬化を起こさないためにも定期的に脂質異常症を治療していきましょう。

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